山口朋子

develop(他動詞) 普段は何気なく見ていたこの動詞。漠然と「発展させる」位の意味しか、すぐには思い浮かばなかったこの語も、取る目的語によって七変化どころではないさまざまな訳し方があるんだなあと、学習を始めたごく初期の頃に面白さを感じ、訳し分けの大切さをまず知るきっかけとなった語の一つでした。例えば、プランなどであれば「立案する」「作成する」、製品なら「生み出す」「作り出す」、アイデアは「考え出す」、企画は「作成する」、場合によっては「導入する」というimplementのような意味にも使えますし、コンセプトなら「開発する」、チームなどは「編成する」、能力は「伸ばす」、病気なら「かかる」、途上国は「発展させる」「開発する」、といった具合に、実に多くのコロケーションが成り立ちます。その他、目的語によっては「成長させる」「育成する・育む」「策定する」などといった訳出が適切となるケースもあります。さらに、It develops that ~ といった特殊な構文は例えば「~ということになる」と訳すとスッキリする場合があるとも学びました。また、-erのついた名詞にまつわる表現では、例えばlate developerといった場合、勿論developの意味を踏まえつつ「発育・発達の遅い人」となりますが、そこから転じて、早熟の反意語である「晩熟」といった訳や、良い意味では「大器晩成」といった訳し方が必要かつ適切となるケースもあります。何だか一見シンプルに見えるdevelop一つを取っても奥深いなあ、とますます翻訳というものに引き込まれ、夢中で色々な表現を書きとめていた記憶があります。